【もやし屋が解説】もやし炒めの悩み!家庭用フライパンでシャキシャキ仕上げるためにはどうする?

コラム

はじめに

もやしって、強火で炒めるのが正解なの?
弱火であまり火を通さないほうがいいの?

これ、もやし屋が非常によく聞かれる質問のひとつです。

霧島製萌
霧島製萌

どちらも正解とは言いづらく、
話すと長くなりますので、解説します。
(結論だけ知りたい方は記事の一番下へどうぞ!)

もやしについて検索しても、関連ワードに「もやし 炒め方」や「もやし 強火 弱火」「もやし 水分」といったキーワードが並び、どれが正解だろう?と悩んでおられる方の多さが推察されます。
もやしは加熱する野菜の中では水分量が多いので、何も対策しないと、
どうしても水っぽくなってしまいやすいですね。
この記事では、もやし屋の視点から、家庭用フライパンで真似しやすい調理法をご紹介します。

ほかにも、
もやしについてよくある質問の解説はこちら。


家庭用フライパンでは再現しづらい「強火でさっと炒める」

温度問題

昔から「強火でさっと炒めれば、もやしの水分は出にくい」と言われていますが、
これは家庭においても鉄フライパン×直火が一般的だった時代の話です。
今や中華鍋を使うような料理屋さんに限った話ともいえるでしょう。

一方、現代のご家庭のキッチンはどうでしょうか。

  • 家庭用フライパン:広く普及しているものは鉄製の中華鍋ほど高温にならず、短時間で「さっと炒める」ことが難しい。
  • 家庭用コンロ:飲食店ほどの火力はなく、加熱ムラが起こりやすい。また、テフロン加工のフライパンは強火に適さない。
  • IH加熱:ガスよりもじっくりと温度が上昇するため、強火で直火の火力は再現しづらい。

このように、「強火でさっと」を実践しようとしても、実際は加熱ムラによって一部が中火程度になってしまったり、そもそもフライパンが強火に対応していなかったりします。
結局、温度が十分に上がらず、野菜炒めが水分でべちゃべちゃになってしまったという方も多いのではないでしょうか。

一般家庭で再現しやすいのは「弱火でじっくり」だけど…?

火がフライパンにようやく当たるぐらいの、ごくごく弱火でじっくり炒める方法はご存じでしょうか。
この方法だと、もやし表面の細胞が破壊されにくく、水分流出を抑えられます。(詳しくは、のちほど解説します)

家庭用に論点を絞ると、

  • 弱火でじっくり加熱:加熱のムラが起きにくく、表面の細胞を加熱しすぎずに火を通せるため、水分の流出を抑えやすい。
  • 徐々に様子が変わるため「余熱で結局、熱が通りすぎてしまった」という失敗が起きにくい。
  • テフロンのフライパンでも再現しやすい。

しかし、長時間加熱すると、栄養(特に熱に敏感なビタミンC)は分解する可能性もあり、どちらが本当にベストか迷うところでもあります。

もやしを強火・弱火で加熱した場合のメリット・デメリットの比較してみましょう。


強火×短時間 vs. 弱火×じっくり加熱

強火でサッと炒めるメリット・デメリット

  • メリット
    • 加熱時間が短いため、ビタミンCなどの栄養素の崩壊が少ない。
    • 余熱でも火が通る。
  • デメリット
    • 一般家庭のキッチン環境では高温を維持しにくく、加熱のムラによって部分的に水っぽくなる可能性がある。
    • 余熱を考慮して早めにフライパンから取り出さないと、熱が入り過ぎる。見極めが難しい。

弱火でじっくり加熱するメリット・デメリット

  • メリット
    • もやしの表面からの水分の流出が抑えられ、シャキシャキ感をキープしやすい。
    • 失敗しにくい。
  • デメリット
    • 長時間加熱するため、熱に弱い栄養素(ビタミンCなど)の分解が進む可能性がある。

もっと詳しく解説:ペクチンと適正温度

もやしと温度の関係

もやしの食感や水分保持には、ペクチンという野菜の細胞壁を構成する成分が、大きく関係しています。
このペクチンは、約50~60℃の温度帯では細胞壁が硬くなり、(付随する酵素『ペクチンメチルエステラーゼ(PME)』が活発になり、ペクチン同士が結合。)80℃を超えると壊れてしまう(この酵素の大部分が機能を失い、水分を保持できなくなる)性質を持ちます。
言い換えると、もやし炒めを上手に作るためには、
表面温度を上げ過ぎないまま、全体にムラなく熱を通すには、どんな方法がベストか?
という問題を考える必要があるのです。

参考

  • 50℃のお湯オレンジページや各種調理記事では、もやしを50℃のお湯に1分浸すと、もやしがしっかり水分を吸収して張りが出ると報告されています。
    上記のペクチンの特徴をふまえると、50℃は細胞壁を壊さず、かつ、もやしにハリを出しやすい、理にかなった温度帯といえます。
  • 70~75℃:一般的なデータによると、ペクチンの分解が始まる温度は70~75℃とされています。

結局どうする? 強火×短時間 vs. 弱火×じっくり

食感を求めるなら弱火でじっくり、時短を求めるなら一工夫してから短時間調理

ここまでの論点をまとめると、
強火×短時間は家庭で再現すると失敗しやすく、
弱火×じっくりは家庭で失敗しにくいものの、栄養が多少失われやすくなる、ということになります。

霧島製萌
霧島製萌

どちらがおいしいか?という点でいえば、
弱火でじっくり加熱のほうが、食感にシャキシャキ感を残しやすく有利。
どちらが毎日の食卓に取り入れやすいか?
という点でいえば、
強火×短時間のほうが調理時間が短縮できるため(失敗の起きやすさに目をつぶれば)有利といえるでしょう。

当社の社長は、弱火でじっくりを個人的におすすめしています。

ただし、長時間加熱だと、もやしの栄養は若干失われやすい懸念があります。
一方、短時間で火を通す場合も、ご家庭の環境で再現するためのひと工夫(フライパンをあらかじめ温めておく、油を先にもやしに絡めておくなど)がなければ、調理にも時間がかかり、水っぽくなってしまうおそれがあります。


まとめ

もやし炒めの強火派・弱火派問題。
もやし屋をやっていると本当によく質問されるのですが、一概にこれがベストと答えにくい問題なのです。
ひとつ言えるのは、ご家庭の環境でコンロを強火に調整したからといって、
熱ムラやフライパンの特性が絡むことから、思ったように短時間加熱できるとは限らない
、ということ。

この点を踏まえてまとめると、

  • 強火でサッと炒める:理想的な調理法といえるものの、一般家庭では再現が難しい。何らかの工夫がないと、かえってクオリティが落ちる。
  • 弱火でじっくり加熱:ご家庭で再現しやすく、食感を保ちやすいが、栄養素の分解に注意。
  • さらにおいしく:どちらの場合も、あらかじめ50~60℃のお湯に1分漬けると、もやしのシャキッとした食感を引き出すことができる。

ということになります。

時短を求めるか、シャキシャキを求めるか。
目的別に、使い分けてみてくださいね。